第98章 子供にあなたがいなくてはならない

一時、場がしんと静まり返った。白石羽奈は水野佑奈の背後に立ち、拳をぎゅっと握りしめたまま有川紘樹を睨みつける。また余計なことをしでかすんじゃないか――そんな警戒が、全身に滲んでいた。

少し離れたところでは、佐伯薫が有川夫人の腕にすがるように寄り添っていた。胸の内は、不安と期待が入り混じっている。けれど、いつまで待っても有川紘樹の返事はない。じわりと、心臓が喉元までせり上がってきた。

有川夫人はたまらず前に出ると、有川紘樹の前まで歩み寄り、その肩に手を置いた。ぐっと強く指に力を込める。早く署名しなさい――そう目配せで急き立てる。

有川紘樹は、職員から差し出された離婚届へ視線を落とした。

...

ログインして続きを読む